「そんな…」


お母さんは相変わらず優しくて、涙が出そうになった。


「俺、宿題があるから。ゆっくりして行ってね」


耕平君は照れ臭そうな顔をして居なくなった。


「じゃあ、おいで」


哲平の後を着いて行き、リビングに通されると大きなソファーに座った。


「どうした?」

「ううん…ん」


哲平は優しく微笑む。


「あの女…連絡あった?」

「大丈夫だよ」


そのときドアがノックされ、若くて可愛い清楚な感じの女の子が、お茶を持って来た。


「どうぞ」

「ありがとうございます」

「いえ」


女の子は少し引きつった顔で笑うと、私をチラチラ見ながら部屋を出て行った。

もしかして…。
女の勘が教えてくれる。


「可愛い子ね」

「あー、星野さん?彼女にはずっと仕事をサポートして貰ってるんだ。本当、いい子なんだ」

「そう」


哲平は、彼女の気持ちに気付いていないのね…。


「私、そろそろ帰るね」

「…あぁ」


私は哲平のお父さんにお線香をあげると、家に帰る。

彼女の視線を痛いくらい感じながら……。