家に帰ると、リビングでボンヤリとしている鳴海に言った。


「明日出掛けるから…」

「…何時頃帰るんだ?」

「明日は帰らない。明後日…帰るよ…」


二人の間に少しの沈黙があり、鳴海が言った。


「…大野と何処かに行くのか?」

「…兵庫に、その後、これからの事、ちゃんと決めるから」

「…そうか」

「ご飯…作るね」


私は以前高橋さんに教わった料理を、沢山作る。

今日が二人で食べる、最後の食事になるかもしれないから…。


二人の空気は重い。
きっと鳴海も同じことを思っているんだろうと思った…。

沢山の料理を作り、食卓に並べると鳴海が来て言った。


「食べきれないよ…ご飯を食べたら、DVDを見ないか?」

「…DVD?」

「結婚式の」

「…うん」


食事を始めると、鳴海は何かを吹っ切ったように、楽しそうに食べた。


「綾香は知らない間に何でも出来る様になったな!」

「高橋さんに教えて貰ったから」

「これなんか、凄く美味しい」

「それ、自分で考えた料理なんだ」


こんなに楽しそうにしている鳴海は久し振りで、そんな鳴海を見ていると泣きそうになったけど、私は必死に我慢して笑った。