「そうね…パパが迎えに来てくれたのが一番だけど…あの人との生活は、私にとって現実じゃなかったのよ。あの人もきっと感じてたと思うわ」

「…現実?」

「そう。後は貴女が考えなさい」

「…うん」

「貴女が離婚してもしなくても、もう誰も反対派しないから、後悔だけはしないように頑張りなさい」


そう言ってママはニッコリと笑った。


「コーヒーを飲んだら帰るのよ?」

「うん」


私はコーヒーを飲み干し、鳴海が待つ家に帰る。


帰り道、哲平に電話をした。


「もしもし」

「哲平?急で悪いんだけどいいかな?」

「…何?」

「明日と明後日、私に哲平の時間をくれない?」

「…本当に急だな。いいよ。明日何時に何処に行けばいい?」

「明日、朝8時に○○駅に…」

「○○駅?…分かった。じゃあ明日な」

「うん、明日ね…」


私が哲平に指定した駅は、哲平と兵庫に駆け落ちした時に使った駅だった。

あそこから始めないと前に進めない気がした…。

記憶を無くして全てが変わってしまったあの街…。

時間は戻せないけど、きっとあの街が教えてくれる気がするんだ。


本当に大切な人を……。