ーコンコン


ノックされドアが開くと、星野さんが立っていた。


「ちょっといいですか?」

「…いいけど」

「さっき聞こえて来たんです。離婚して哲平くんと一緒になるんですか?」


星野さんは、目をウルウルさせながら言った。


「…まだ分からない」

「私から…哲平くんを取らないで下さい…」

「…付き合ってるの?」

「…いえ。哲平くんはずっと貴女が好きだったから…。でも私、ずっと哲平くんを支えて来て、やっと存在も認めて貰えるようになったのに…」

「…?」

「私、哲平くんに一目惚れだったんです。でも貴女の事が好きで、まるで相手にして貰えなかった…。だから会社を手伝って軌道に乗り始めて、やっとお母さん達に紹介して貰えるようになったんです」

「…だから?」

「だから後から現れて私の居場所、取らないで下さいっ!」


星野さんはそう言って、ボロボロ泣いていた。


「それは私と哲平の問題だから」


”私の居場所”


星野さんの言葉に胸が痛んだ。

私が昔、欲しくて欲しくてたまらなかった場所だったから…。