哲平が来て少し経った時だった。


玄関が開く音と…


「誰か来てるの?」


鳴海の声が聞こえた。
そのまま鳴海は急ぎ足でリビングに来て、私と哲平の姿を見て黙ってしまった。


「あの、今日は話があって…」


気まずそうに切り出す哲平に向かって、鳴海は冷たく笑って言った。


「又よりでも戻したいの?ならいいよ、連れて行っても」


ねぇ、何言ってるの?


そうじゃなくて…。

哲平は鳴海の為に…。


私、鳴海にとって必要ないんだね……。


私の頭は混乱して、涙が出るばかりで何も言えない…。


「それからさぁ…。匿名で融資したお金、返してくれない?あれ、俺だから」


鳴海が言った言葉に私は唖然とした。

切羽詰まった時、人はこんなにも変わってしまうものなの…?


「ねぇ、鳴海さん…。哲っ…大野くんは、鳴海さんがしたって知らなくて、あの時のお金に感謝してるから、今度は鳴海さんの力になりたいって、今日来てくれたんだよ?なのに、何でそんな言い方をするの…?」


私には怒りなんて無くて、ただ悲しかった…。


鳴海には絶望を感じ、哲平には申し訳ない気持ちでいっぱいだった……。