鳴海が、今の鳴海が哲平からの融資を受けるのだろうか…。

私の不安を見抜いたように、哲平が言った。


「俺、明日行って東城さんに話してみるよ。夕方には居るんだろ?」

「…うん。ごめんね」

「いいんだよ。明日な!」

「うん」


人生は予想もしなかったことが、簡単に起こる。

約4年前、哲平に融資した鳴海が、逆に哲平に融資されるような状況になるなんて、誰も予想なんてしなかった…。

鳴海が融資を受け取るかどうかは別として、帰って来てくれないと、何も進まない…。



早く帰って来て…。


結局、鳴海は帰って来なかった。

私は鳴海の携帯に電話をする。


”お客様がお掛けになった電話番号は、現在電波の…”


機械音が悲しく響く……。


私はリビングに座って、何度か鳴海の携帯に電話したけど、繋がる事はなかった。


ーピンポン


私は急いで玄関に向かう。

鳴海なの?!


ドアを開けると哲平が立っていた。


「どうぞ」


私はニッコリ笑って、哲平をリビングに通す。

もう夕方だったんだ…。
鳴海が家のチャイムを鳴らす訳ないもんね…。