「じゃあ行って来るな!」

「行ってらっしゃい」


高橋さんが居なくなって、私は全ての家事をこなす。
朝からまともにやると、結構な仕事だ…。

主婦なんて、結婚しているから主婦って呼ばれるけど…。
主婦という名の家政婦みたいね。

お金が貰えない家政婦…。

何の変化もなく、いくら部屋を奇麗にしても気付いて貰えなかったり、いくら一生懸命にご飯を作っても、空腹を満たす為だけに食べられる。

そんな毎日に私は、寂しさを感じるんだ。

鳴海は今、凄く大事な時期だから何も言えない…。


「1980円です」

「じゃあ、2000円で…」


晩御飯に必要な材料だけを買い、家に戻る。

運転手も居なくなり、私は電車やバスを使って買い物に出掛けるようになった。


ープップ


車のクラクションの音に振り返ると、哲平の姿があり、窓が開いた。


「買い物?」

「…うん」

「乗って行けよ?」

「…ありがとう」


哲平とは実家に呼ばれた時に会ってから、会うのは初めてで、私は気まずくて顔が上げられない。


「どうした?」

「…この前はごめんね」


俯く私に哲平は笑顔で言った。


「もう忘れてたよ」

「……」

「何か、大変そうだな…」

「…?」

「おじさんから聞いたよ」

「…パパ?でも、大丈夫だよ」

「相変わらず溜め込んでんだろ?俺で良かったらさ…いつでも連絡して来いよな?」


真っ直ぐ前を見ながら、優しく言う哲平の声はトキメキとかじゃなくて、私の気持ちをホッとさせた…。


「ねぇ、哲平のサポートをしてくれてた星野さんって…どんな事をしてたの?」

「あー、星野さんは元々、経理の勉強をしてたからな…」

「じゃあ、私じゃサポート出来ないね…」


曇り顔の私に哲平が言った。