「ふん、いい気味だ」

おばさんは血だらけになった
佳奈子を抱え風呂場に
運んで行った。

「これでもやるよ」

そい言って投げつけたのは
お母さんに買ってもらった
唯一思い出のぬいぐるみだった。

戸が閉まると、佳奈子の
目からは涙が流れた。
出血が止まらないまま
彼女はぬいぐるみを力を
振り絞り抱きしめた。

「おばさん、ただいま」

ユリが帰るとおばさんは
床を拭いていた。

「おかえり、奥におやつ用意
しておいたから食べていいよ」

ハッとユリに気づくととっさに
さっきの棒を隠す。

「はい」

その後ろを通りユリはテーブル
の上にあるおやつをつまむ。

「おばさん、佳奈子は?」

ユリが聞くと、

「あぁ、佳奈子はちょっと
遊びに行かせたよ。うるさいからね」

「そう…ですか」

それから2時間、午後7時を過ぎても
佳奈子が帰ってこないので
さすがにユリは心配になって、

「おばさん、佳奈子帰って来ないよ?」

「ん…うん」

しかしおばさんは曖昧な
返事をするだけだった。

ユリはトイレに行こうと
風呂場を通り過ぎると鼻をつく
異臭が立ちこめていた。