「そんな時間もうないわよ。すぐに制服に着替えなきゃいけないんだから」
と、一美は美保の腕を痛いほど掴んで離さない。

そのまま廊下をまるで花魁道中のように練り歩かされてしまった。
「え、橋本さん?」

後ろから驚きの声が聞こえてきて美保の体がビクンッと跳ねた。
緊張して喉がカラカラに乾いて、振り向くだけでぎこちなくなってしまう。

「おはようございます、高野さん」
一美が先に振り向いて笑顔で行った。

それにつられるようにしてゆっくりと顔を向ける。
そこには出勤してきたばかりの裕之の姿があった。

裕之は他の社員たちと同じように驚いた顔を美保へ向けている。