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「化粧品は持ってきた?」
「うん」

もちろん持ってきた。

だけどこの服を着るだけで随分恥ずかしかったし、もういいかなぁという気持ちになっている。

「ねぇ一美、今日はメークはやめておこうかな」
おずおずと声をかけると一美が驚いたように目を丸くした。

「どうして!? せっかく昨日これだけのものを集めたのに!」
と、美保が持ってきた数々のメーク道具を指差した。

どれも決して安い商品ではなかった。
「でもやっぱり、場所とか考えたいし……」

「なに言ってるの。会社だからこそ目立って高野の目にとまることができるんでしょう?」

腕組みをして説得する一美に美保は鏡の中の自分を見つめた。