「そっか。じゃあもしかしたら脈アリなんじゃない?」
「脈!?」

その言葉の意味はもちろん知っていたけれど、思わず聞き返してしまう。

もしかしたら裕之と付き合うことができるかもなんて、考えたこともなかったから。

「だってさ、好きでもない人に自分の連絡先を教えないでしょう?」

「そ、そうかも」
取引先ならいざしらず、同じ会社の人間なのだ。

仕事での連絡だけならパソコンのメールで事が済む。
そんな中で私用電話を教えることはほとんどなかった。

「これは期待大だね! 美保、今日の夜開いてる?」
「え? 今日の夜?」

「うん。気合入れなきゃでしょ!」
一美にバンッと背中を叩かれて美保は激しく咳き込んだのだった。