だけど手に付かないのだからどうしようもない。
他の人たちの邪魔にならないようにそっと席を立ち、トイレに向かう。

また死神が現れて怒られるかと思ったが、今回は誰もいなくてホッと胸をなでおろした。

どうしよう。
このままじゃ帰れないかも。

個室に入って考え込む。
今日は裕之と挨拶すら交わしていないなんて、あの死神に報告できるはずがなかった。

せめて会話くらいはしておかないと。
その中であわよくば連絡先も交換して。

と、考えるばかりで具体的にどうすればいいのか全くわからない。
「とにかく行ってみるしかないのかな」

ポツリと呟く。
一美だって、連絡先を聞くために他の部署へ行くべきだったと言うようなことを言っていた。