☆☆☆

あぁ、なんてあっけない。
私の25年間はこうして幕を閉じることになった。

ぼーっと歩いていて車にひかれるなんて、両親にバレたらきっと飽きられてしまう。
美保はそういう子だったからと、苦笑いしている姿が浮かんでくるようだった。

「起きろ」
そんな声が聞こえてきて美保はゆっくりとまぶたを開けた。

てっきり自分は病院で目を覚ましたものと思っていたけれど、それにしては体が軽い。

車にひかれたはずなのに痛みも感じなかった。
そして周囲が真っ暗なことに気がついて「ここ、どこ?」と、戸惑いの声を上げる。

美保の声は少しだけ周囲にこだまして消えていった。
ここがどこだかわからないけれど、体に異常がないようなのでひとまず安心して上半身を起こす。

そのまま立ち上がってみたけれど、やっぱり痛みは感じられなかった。
よかった。