こうして人を合わせるのはなんとなくの癖だった。

同じものを頼んだ方が同じタイミングで料理が運ばれてくるというのを、子供の頃家族で行ったファミレスで教えてもらった。

「美保はもう少し個性を出してもいいと思うよ?」
一美にそう指摘されたのはA定食が運ばれてきてからだった。

白米とおみそしるとつけものとサラダと焼き魚。
なんだかホッとする味だ。

お味噌汁を飲んでほんわりした気持ちになっている美保へ向けて「ねぇ、聞いてる?」と、一美。
美保は慌てて「き、聞いてるよ」と返事をした。

社食は賑わっていて正直一美の声も聞き取りにくいくらいだ。

少し大きな声で会話しなきゃいけないから、恋愛相談はここではできなさそうだと諦めていたところだった。