それがお世辞とは思わずに美保はパッと顔を上げた。
かわいいなんて言われたのは何年ぶりだろう。

小学校の頃、親戚の人に言われたのが最後かもしれない。

思わず頬を染めて喜んでしまった美保を見て一美がプッと吹き出して笑うのをこらえている。

「で? なんで急にそんな話しをしてきたの?」

色恋沙汰の話をしたことなんてない美保が自分から仕事以外の話題をふっかけてきたことで、すぐになにかあったのだと感づかれてしまった。

「実は……」
と、言いかけて美保は口を閉じる。

恋愛経験ゼロの美保は人に恋愛相談した経験もゼロだったことに気がついたのだ。

これから一美に自分の好き……かもしれない人について説明するのだと思うと、急に緊張してきてしまった。