その会話をなんとなく聞きながら、そっか今日は金曜日かと思い出す。
明日と明後日は休みだから、みんな余計にはしゃいでいるらしい。

美保は特に誰かに声をかけられることもなく席を立ち、更衣室へ向かった。
この会社で事務をしている美保は電車で二駅のところにアパートを借りて暮らしている25歳。

就職氷河期時代に、運良く大学卒業と同時に就職先を決めることができたタイプだった。
でも……。

私服姿になった美保は会社から一歩出てため息を吐き出す。
金曜日の夜ということであちこちからにぎやかな声が聞こえてくる。

同僚を肩を組んであるくスーツ姿の人。
数人で固まってスマホ画面を見て騒いでている女子社員たち。

つい先程仕事が終わったばかりなのに、彼らはすでにオフのスイッチが押されているらしい。