必死で涙を堪えてうつむく。
「はじめましてエクセルです。これからよろしくお願いします」

流暢な日本語で挨拶するものだから、部署の中がざわめいた。
この一瞬でどれだけの女性社員のファンをつけてしまっただろう。

ライバルが多いのはちょっと困るんだけど。
そう思っているとコツコツと革靴が床を叩く音が聞こえてきて、美保の前で止まった。

「大丈夫?」
そう言って差し出されたハンカチにそっと顔を上げる。

そこには死神が……いや、エクセルくんがちょっと困った顔で立っていた。
「だい……じょうぶ……」

ちゃんと返事をしたいのに、涙で声にならない。
美保は差し出されたハンカチを受け取って次から次へと流れてくる涙を拭う。

一美がオロオロしているのがわかって申し訳なかったけれど、止められない。