こんなことってあるだろうか。
だって、だって彼は死神で。

名前も知らない死神で。
私を助けたことで消えてしまったのに。

あれは夢だったんだろうか?
だって今自分の目の前に立っている彼こそが、その死神だったんだから。

「今日から手伝いに来てくれたエクセルくんだ」
上司がたどたどしく死神を紹介する。

すると死神はニコリと笑顔を浮かべて全員へ向けて会釈をした。
みんな、その姿が見えている。

美保にしか見えなかった彼の姿をちゃんと目視しているのがわかった。
「ね、ねすっごくカッコイイでしょう!? これは裕之なんかじゃ足元にも及ばないね」

一美が美保の腕を掴んで興奮気味に言う。
美保はそれに答える余裕なんてなかった。