「ねぇ、知ってる?」
それは美保が灰色の生活を送り始めてひと月が経過したときのことだった。

会社について自分のパソコンを立ち上げて、いつものように仕事を開始しようとしたとき、一美が顔を寄せて囁いてきた。

「え?」
なんのことだろうと、栄養不足でぼーっとしがちな頭で聞き返す。
「今日、外国の本社から助っ人が来るって噂」

「あぁ、そうなんだ」
助っ人が必要になるほど仕事が忙しいとは思わないけれど、来るなら来るで別に構わない。

どうせ自分には関係のない人だろうし。
「それが、めっちゃカッコイイんだって!」

興奮したように言う一美に美保は苦笑いを浮かべた。