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ここで車に飛び込んだら死神に会えるんだろうか。
会社へ行く途中の交差点。

大きな横断歩道の前で立ち止まって美保はぼんやりと考える。
行き交う車はスピードを落とすこと無く美保の前を通り過ぎていく。

美保はそれを見つめて何度も何度も足を踏み出そうと意識する。
だけどできない。

できないのだ。
あの時と同じようには。

車にひかれるときの恐怖が蘇ってきて、怖くて足が固まってしまう。

一歩踏み出すだけでこの苦しみから開放されるとわかっているのに、それよりも恐怖がってしまう。

美保は歩道に立ち尽くしたまま、両手で顔を覆って気が付かれないように嗚咽を漏らしたのだった。