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体に強い衝撃が来ることを見越して固く目を閉じる。
私の生きてきた25年間は決して無駄なものじゃなかった。

とくにこの一週間はとても濃くて、したことのない経験をすることができた。
まぶたの裏側に浮かんできたのは死神の笑顔だった。

死神のくせになんとなく優しくて、グイグイと背中を押してくれた変な人。
だけど嫌いじゃなかった。

むしろ好きだったのかもなぁ。

なんて考えている間にも痛みがきていいのに全く体に衝撃を受けることがなくて、美保はそろそろと目を開けた。

するとさっきまで立っていた場所に自分はいなくて、横断歩道を渡り終えた場所にひとりで立っていることに気がついた。