まるで自分の動きだけがスローモーションになってしまったみたいだった。
人々は美保を通り越し、美保も同じように歩いているのにそれに追いつくことができない。

どれだけ頑張って歩いてみても、いつまでも追いつけない。
横断歩道の中央まで来て美保はついに立ち止まった。

あぁ、そうか。
追いつけなくて当然だった。

だって彼らの未来と自分の未来は違う場所にある。
だから、追いつくことなんて最初からできなかったんだ。

立ち尽くす美保の耳に車のクラクションが聞こえてきた。
切羽詰まったような音に視線を向けると、すぐに近くまで車が迫ってきていた……。