そんなことに今更気がついても遅いかもしれない。
でも……。

「本当に、俺でいいのか?」
死神が戸惑いながらも美保の体をベッドの押し倒す。

美保は頷く。
緊張で喉はカラカラに乾いて、恥ずかしさでまっすぐに死神の顔を見ることができない。

それでも、力強く頷く。

この、友達も恋人も来たことのないアパートの一室で、まさかこんな風なことをする日が来るなんて夢みたいだ。

「でも、あの……私初めてだから」
それだけは告げておかなければならないと思い、小さな声で言う。

すると死神はふふっと笑い声を上げた。
「そんなのわかってる。お前は初で可愛くて、最高の女だ」

そんなふうに言われるのは映画の中のキャラクターだけだと思っていた。
現実にもあるんだなぁ。

そんなことをぼんやりと考えながら、美保は霧がかかったような白い世界へ落ちていったのだった。