電車の中で少しうつらうつらした美保は帰ってきた頃にはすっかり目が覚めていた。
時刻は午後10時を過ぎていたけれど、まだ眠くない。

「他に心残りはないか?」
ベッドを背もたれにしてふたりで床に座り込んだ状態で、死神が聞いてきた。

あるよ。
まだまだ沢山、あなたと一緒にやってみたいことがある。

だけどそれは口に出さなかった。
きっと、迷惑がられてしまうから。

だから美保はジッと死神の顔を見つめた。
整った顔立ち。

素晴らしいスタイル。
だけどそれだけに惹かれたわけじゃない。

美保の手助けをしてくれたこと、美保を助けてくれたこと、思いっきり笑わせてくれたこと。