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「さっきは助けてくれてありがとう」
水族館から出た美保はようやく気持ちが落ち着いてきてそう告げることができた。

だけどまだ心臓はドキドキしている。

あの男たちに声をかけられて怖かったこともあるけれど、それ以上に死神が助けてくれたことにときめいていた。

だから、お礼を言っているのに死神の顔を直視することができずにいる。
「ああいうクズどもから死ぬべきだ」

死神が目を吊り上げてつぶやく。
色々な死を見てきて色々な気持ちを持ってきたんだろう。

その表情は真剣そのものだった。
「そんなこと言わないで。私、大丈夫だったんだから」

そっと自分から手を伸ばして死神の手を握ってみる。
死神は拒否することなく、当然のように握り返してきた。