と、思っている間にあっという間に左右に座られていた。
ベンチからはじき出された死神は仏頂面でふたりの男を睨みつけている。

「いえ、私は、えっと……」
こういうときどう言えばいいのかわからない。

恋愛映画は散々見てきたけれど、自分の身に振りかかるとは思ってもいなかった。
「いいじゃんいいじゃん。行こうよ」

強引に美保の腕を両脇から掴んで立たせる男たち。
これってもしかしてやばい!?

ダラリと背中に冷や汗が流れていく。
いや、水族館の中にいる限りはきっと大丈夫。

あちこちに人がいるし、大声を出せばすぐに誰かが飛んできてくれるはず!
男ふたりにズルズルと引きずられるようにして歩き出した美保は叫ぼうとした。

けれど声が出ない。