ぼーっと裕之のことを思い出している間に、つい口をついて言葉が出てきていた。
「強いて言えば、なんだ?」

死神がグイッと体を近づけてくる。
未練がなにもないと言われてうろたえていたので、食いつくような感じだ。

「ちょっと気になる人はいました」
でも、好きかどうかはわからない。

なにせ今まで恋愛経験は1度もないし、異性として好きとかよくわからない。
けどまぁ、気になって視線を送っていたくらいだから、嫌いではないんだと思う。

だから好きだったのかと聞かれるとやっぱりわからないけれど。
「それだ! 最後に告白したり、キスしたりしたいんだろう!?」

美保の口からようやく未練っぽい言葉が出てきたことで、死神は嬉しそうだ。