死神に提案されてここまで来たけれどもちろん交通料金や観覧車にかかる料金は一人分。
それにあと2日で死んでしまう美保にとってお金なんて固執する必要のないものだった。

更に地味で目立たない美保には友人と遊ぶ習慣も派手な買い物をする趣味もなく、お金だけは有り余っていた。

死神に提案されなければ数日間豪遊するということを考え付きもしなかっただろう。
「夜景、確かにキレイだね」

前の席で子供みたいに観覧車の窓から景色を見下ろす死神へ向けてつぶやく。

ゴンドラはほとんど頂上まで来ていて、そこから街を見下ろすとどれもがとても小さくてどうでもいいようなことに感じられる。

自分が経験しているこの不思議な出来事もきっと、他の人からしたら取るに足らないことなんだろう。
「あぁ、キレイだな」

死神はジッと夜景から視線を離さずにそう答えたのだった。