美保は慌ててその後を追いかけた。
死神が向かった先は裕之がいる部署だ。

中を覗いてみると、誰もいないのに誰かが髪を引っ張ってきたこと、椅子が勝手に移動したことを熱心に説明する裕之の姿があった。

その隣には一美もいて、自身が経験したホラー現象を説明している。

ふたりとも真剣そのものだけれど、聞いている社員たちは半信半疑といった表情を浮かべていた。

「本当なんだって! この会社では昔自殺者が出たのよ!」

さっき美保が説明した嘘をそのまま力説している一美を見ると、なんだか申し訳ない気分になってくる。

そんな中、誰にも見えない死神が堂々と部署の中に入っていき、そのまま裕之の前に立った。