思い浮かんでくるのは途中までしか見ていない映画のことばかり。
他にやり残したことと言えば、仕事の事務処理くらいなものだ。

これって別に心残りでもなんでもないよね?
「特にありません」

ろくに考えもせずに答えた美保に死神が目を見開く。
「な、なんだと?」

「心残りとか、願いとか、特にありません。だから私のことはすぐに連れて行ってもらっても大丈夫です!」

自信満々に言う美保に死神は更に困惑した様子で視線をウロウロさせはじめてしまった。
あぁ、なんだかわからないけれど困らせちゃってる?

死んでもまだ誰かを困らせるなんて、私ってほんとうにダメ人間だなぁ。
「本当になにもないのか? 途中で引き返すことはできないんだぞ?」

「強いていうなら映画のラストが気になります」