熱心に仕事をしていたわけではないけれど、気がつけあば午後5時のチャイムが聞こえ始めていた。
橋本美保はパソコンデスクに座ったままで小さく息を吐き出した。

美保が勤めている会社のいいところは残業がほとんどないところだった。
その分仕事が少ないかと言えば、そうでもない。

なんでも、美保が入社するほんの2年前まではみんな普通に残業をしていたらしい。

けれど残業している社員が日中に仕事をサボりまくっているのを目撃した上司が、残業イコール仕事熱心ではないということに気がついて、残業ゼロを目指して動き始めたらしい。

おかげで美保が入社した頃にはほぼ残業ゼロの、まぁまぁホワイト企業として知られるようになっていた。
そこに入社できたことは感謝すべきことかもしれない。

パソコンの電源を落として帰る準備をしていると後方で同僚たちがこれからどこに食べに行くか、どこに飲みに行くかという会話で盛り上がっているのが聞こえてきた。