「話逸らしてるとこ悪いけど、さっきの話、おわってないから」
大きな彼の右手。それがわたしの口を隠して、キスまで落としといて。すぐ向こうには、何十人というスタッフと演者がいるのに。
「男が興奮するってことは、俺も例外じゃないって話」
また、この男に意識をもっていかれる。
「言ったじゃん、お仕置きって」
「……っ」
「ああ、ここ、噛んどこうか」
とんと、指でおされ、さすられるのは、胸元。
「約束してたし」
否定したいのに。喋る自由をもぎとられて、それを許してもらえない。
テレビの前ではあんなにも天然で、かわいらしいとこばかり見せるくせに、
「そんな噛まれたい?」
切実な訴えだって気づいているくせに、それをせせら笑うようにつき返して。わたしをどんどん困らせていく。それがまるで快感かのように。
ふるふると顔を左右に振るのに、口元の手で離れることなく抑えられたまま。
そのまま、彼の前髪がわたしの胸元に落ちて、舌が這っていく感覚。
だめだ。ほんとうに噛まれる。そしたら仕事が——
「……」
ぴたり、彼の舌の動きが止まって、あまりにも整った顔がわたしを見上げるようにのぞく。