「水着?」
「うん」
「んーまあ、ならいいけど。でも、なんかいや。男興奮させるとか気に食わない」
「自分だって女の子にさんざん騒がれてるくせに」
「俺はべつ」
「勝手すぎる」
「いいの? 俺にそんな悪態ついて」

 ぐっと、肩を抱かれては、そのまま人目につかない場所へとまわりこむ。
 機材がたくさん並ぶ場所をくぐり抜け、すこし薄暗い校舎の一角へと到達すれば——

「お仕置きするよ」

 深い深い瞳の色に見つめられて、あやうくキスする寸前まで顔を近づけられる。
 
「……っ、ち、かいよ」
「だから?」
「これじゃあ……」
「キスしそうって?」

 吐息がかかるたびに、ぞくぞくしてしまって、呼吸がままならない。
 すこしでも動き方を間違えば、触れてしまいそうな綺麗な唇。
 触れたい、けど、触れてはいけない。

「……ねえ、さっき」
「さっき?」
「関東出身じゃないの?」
「……さあ?」

 聞き慣れないあのイントネーションが鼓膜に張り付いて離れない。

「……意外」
「なんで?」
「普段話してるとき、全然出てこないし」
「気をつけてるし」
「そうなの?」
「そんな意外?」
「なんか……根っからの東京人のような気がしてたから」
「偏見」
「ち、が——っ!」
 
 ぐっと、彼の手で口をおさえられて、自由を奪われ、それから——彼の唇が手のひらごしで重なる。