(龍司との決別にわざと喫茶店においてきたのに)

龍司と巡り合った時、一緒に買い物に出かけた。

「みゆ、何かプレゼントさせてくれ」

「そんな、大丈夫です」

「俺がみゆにプレゼントしたいんだ、これなんかどう?」

龍司が手に取ったのは、淡い色のスカーフだった。

前から欲しかったが、中々買う機会を逃して、買えずにいたものだった。

「でも……」

「みゆは本当に欲がないな、でもそう言うところが好きだ」
「龍司さん」

龍司はすぐにでもみゆと結婚したかった。

俺は橘不動産の次期社長だ。

生まれた時から自分の思うようにはさせてもらえなかった。

学校も親が決めたところに進学した。

「お前は橘不動産を背負っていく立場だからな、私の言う事を聞いていればよい」

俺はその当時、自分の意志がなかった。

やりたいこともなく、好きな女性もいなかった。

大学に進学して、はじめて好きな女性が出来た。

(この子と結婚したい)

俺は好きイコール結婚の考えだ。