実は愛を確かめ合ったのは龍司さんが初めてだった。

ただ一人十年前に生涯を共にしてもいいと思った相手がいた。

東城慎太郎、東城コーポレーションの社長。

慎太郎さんは当時奥様を亡くされて、生きる気力をなくしていた。

慎太郎さんとは親子ほどの年の差があり、恋愛感情と言うよりも父親を慕う娘のような気持ちだった。

私は励ますつもりで、食事をしたり、遊びに行ったりと二人の時間を過ごした。

「みゆ、みゆは好きな男性はいないのか?」

「いないです、私、ずっと慎太郎さんの側に居てもいいですか?」

私は慎太郎さんの側に居ると、穏やかに過ごせると気づきはじめていた。

「みゆ、わしとみゆとは親子ほどの年の差がある、この先一緒にいたら、みゆに迷惑をかけてしまうよ」

「そんな事ないです、私に慎太郎さんの身の回りのお世話をさせてください」

「みゆ」

慎太郎さんも、私を慕ってくれていた、いや、慎太郎さんにすれば、私は恋愛対象だった。

しかし、親子ほどの年の差が、慎太郎を臆病にしていた。