俺は騙されたとその時気づいた。

金をせがむとき、涙ながらに迫られた。

違和感は感じていた。

嘘の涙だと言う事を……

綺麗な涙だとは思えなかった。

それなのに、俺は彼女を愛していたため、放っておけなかったのだ。

あれから二年、俺はある女性に恋をした。

その女性の涙は綺麗だった。

恋に落ちると周りが見えなくなる。

恋をした女性は、喫茶店の窓側にじっとしていた。

俯いて動かなかった。

俺は仕事の打ち合わせに寄った喫茶店で彼女を見かけた。

彼女の目の前にはコーヒーカップが置いてあり、口をつけた形跡がない。

俺が喫茶店に入って来てから、かれこれ三十分は経過している。

「廉也様、そろそろお時間です、もう出発しませんと 遅れてしまいます」

俺に声をかけたのは親父と俺の秘書をしている高城だった。
正確には俺の秘書ではなくお守り役だ。

「ああ、ちょっと待ってくれ」

俺はどうしても彼女の存在が気になった。

彼女のテーブルに近寄った。