「苦労したり、悩んだりしたことないでしょ」
「そんなことないよ、俺だって悩んだりすることはある」

「そう」

先輩がお疲れさまって飲みに誘ってくれても、いつも会計は俺だった。

彼女はそもそも飲み会にこない。

俺は彼女とじっくり話したかった。

ある日二人で出かける誘いをした。

彼女は誘いに乗ってくれた。

有名なレストランを予約して、バーで酒を飲んだ。

「今度休みに一緒にでかけないか」

「それってお付き合いの申し込み?」

俺の誘いに彼女は答えた。

「うん、結婚を前提に付き合いたい」

俺の言葉に彼女はにっこり微笑んだ。

(マジ?OKってことだよな)

俺はウキウキしていた。

しかし、デートのたびに金を貸してほしいとせがまれた。

彼女に渡した金は数十万を超えた。

それでも俺は彼女と結婚したかった。

身体の関係が続くなか、ホテルで目覚めた俺は、彼女がいないことに気づく。

「ひかる、ひかる」

その後携帯も繋がらず、会社も退職した。