ゆかりはスマホを切った。

(どうするのよ、堕ろした方がいいなんて言えない)

その頃、健志はみゆに連絡していた。

「みゆちゃん、姉さんから聞いたよ、妊娠の結果が出るまで、検査は延ばそう」

「本当ですか、よかった」

しかし、次の健志の言葉に、みゆは谷底に突き落とされた感覚に陥った。

「みゆちゃん、もし、妊娠していたら、堕ろして欲しい、主治医として出産は賛成出来ないからね」

(えっ、北山先生は何を言ってるの)

「みゆちゃん、聞いてる?」

スマホは切れた。

「みゆちゃん、みゆちゃん」

みゆは呆然とした。

(私は廉也さんの赤ちゃんを生むことが出来ないなんて)

その頃、ゆかりはみゆにどう伝えるべきか悩んでいた。

ゆかりは仕事を早めに切り上げて、みゆの元に向かった。

まさか、健志がすでにみゆに伝えていたことなど、誰が予想出来ただろうか。

ゆかりはインターホンを鳴らした。

しかし、応答がない。