タクシーを降りて、別のタクシーを見送っているみゆを見つけた。

「みゆさん、どうしたの?」

ゆかりに声をかけられて、我に返った。

「廉也さんが、あのホテルから出てきたんです、すらっとした若い美人と……」

出てきたのは別々だったのに、思い込みとは恐ろしいことだ。

ちょっと言葉たらずで意味がだいぶ違ってくる。

「えっ、知ってる人?」

「見たことがない人です、廉也さん、やっぱり……」

「やっぱりって、何か心あたりあるの?」

「昨日、ホテルに泊まるなんて言っていなかったのに……」

みゆは涙が溢れて止まらなかった。

「とにかく、中に入りましょう」

ゆかりはみゆの肩を支えてビルの中に入った。

みゆは過呼吸に襲われて、しばらく医務室で休んでいた。

まが悪いとはこのことだろう。

与那国島から、健志が東京へ出てきていた。

「姉さん、久しぶり」

「健志、どうしたの?」

その時、ベッドで横になっているみゆを見つけた。

「みゆちゃん、具合悪いの?」