「ロリコンなんですか?」

 おじい様の命令で、私は本間さんに車で送ってもらうことになった。
 私は助手席でシートベルトを締めながら、本間さんを見る目が自然と鋭くなる。おじい様がいない場で、猫を被る必要なんてない。おじい様と手を組んだこの人は私の敵だ。
 そんな私の物言いに、本間さんは吹き出すように笑った。バカにされたような気がして、少し鶏冠に来る。

「そうですね。否定は出来ないかもしれません」

 笑って口元が緩んだまま、本田さんもシートベルトを締めて出発の準備をする。
 マンションまで送ってもらえとのことだったけど、本当にまっすぐ送ってくれるか半信半疑で警戒する。変なところに連れていかれそうになったら、昔勉強した護身術に火を吹いてもらおう。

「恥ずかしくないんですか?」

 ミラーの調節をする本間さんを睨みつけるが、意に介した様子はない。私の方を見向きもしないで、角度を調節している。

「未成年者とはいえ、きちんと法に則って婚姻した関係です。恥じる要素がどこにあります?」

 エンジンをかける前に私の方を一瞥したけど、相変わらず口元は笑っている。

「今日から夫婦なんですから、仲良くしましょうよ」

「そんなつもり、毛頭ありません。おじい様の命令でなければ、この車にだって乗ったりしません。私に指一本でも触れたら、毛根死滅させてやりますから!」

 微笑みかけられて、脳裏に過った昔見た護身術のシーン。すごんだつもりが、本間さんは声を上げて笑った。

「それは恐ろしい。まだハゲたくはないですね」

 前髪をかき上げて、ハンドルを握る本間さんから目を逸らして、動き出した車窓を見る。
 ハンドルを握る本間さんは、なぜか上機嫌だった。