けれど、わたしはふとあることに気づいた。


「好きな人って……?」

「1年前、俺に言ったろ。大切な人ができたって」


そう言われて、思い当たるのは、神崎くんと出会った日のことだ。


「それ、もしかして推しのこと……?」

「推し?」


藍くんの手が緩む。

わたしは振り返り、藍くんの瞳をまっすぐに見上げた。


鼓動が早鐘を打つ。

なぜかじんと目の奥が熱くなる。


ちゃんと向き合わなきゃ。

藍くんが打ち明けてくれたのだから、わたしも――。


「神崎くんに抱いてるのは恋愛感情じゃない。初めて好きになったのは、藍くんだよ」

「え?」