そしてくるりと背を向け、歩き出そうとした時。

不意に伸びてきた手に、後ろから抱きしめられていた。


「……どこにも行くな」


絞り出すように掠れた声が、わたしの鼓膜を揺らした。


「ぁい、くん……」


藍くんに抱きすくめられ、わたしは目を見張る。


ぎゅうっと、まるで縋るように抱きしめてくる藍くん。


このまま藍くんの温度に溶けてしまいそうになって、でも必死の抵抗をする。


「でも、わたしがいたら藍くんに迷惑が……っ」

「――好きだ」


わたしの声を遮るように放たれた藍くんの声が、心を揺らした。


え……?

今、なんて……。