そうしたやりとりをしているうちに、ようやく強張っていた心が解けていくのがわかった。

改めて、藍くんの瞳に向き合う。


「ありがとう、助けてくれて」


藍くんが助けてくれなかったら、わたしの心はぽっきり折れて、もう修復不可能だったかもしれない。

自己嫌悪で窒息するところだった。


頭上で木々がさやさやと揺れる。

生い茂る葉の隙間から、眩しい光の筋が差し込む。


ああ、いつまでもその綺麗な瞳に映っていたくなっちゃうな。

……でも、もう決めたことだから。


さっきわたしを千茅家で預かると言ったのは、おじさんとおばさんから引き離すためだったってわかってる。

これ以上ここにいたら、離れがたくなっちゃう。


寂しさを振り切るように笑顔を作る。


「じゃあ、行くね」