「どうしたの……!?」


異変に気づいたわたしは、スクールバックをその場に手放し、思わずソファーに駆け寄る。


「昨日ここで遊んでて、急に体調崩したんだよね。だからここに寝かせておいたんだ」

「ちょっと体調崩しただけ。密が大げさなんだよ」

「そんな……」


全然ちょっとなんかじゃない。

だいぶ重症であることは、見ただけでもわかる。


「んじゃオレ、食料の買い出しに出掛けてくるから」

「えっ」


密さんがあまりに軽いトーンで言って、玄関に向かって行ってしまう。

わたしは慌ててその背中を追った。

するとリビングから離れたところで、密さんがこちらを振り返り、こっそり耳打ちしてきた。


「藍についててやって。キッチンとかなんでもいじっていいからさ、アイツ昨日からなにも食べてないから、なんか作ってやってくれないかな。よろしく、小鳥ちゃん」

「あの、」


密さんはいつだって、のらりくらりと追及の手から逃げるように行ってしまう。

気づけば、目の前のドアはバタンと閉められていた。