だれか家族の人がいるのかな。

だとしてもどうして……?と、ここまで来てもなお密さんの真意は見えないまま。


「し、失礼します……」


ぎゅっとスクールバックの紐を握り直し、おそるおそる部屋の中に足を踏み入れる。


まるで生活感のない部屋の中。

突き当たりのリビングに、彼はいた。


「生きてる? 由瑠ちゃん連れてきてやったぞー」

「えっ、藍くん……!?」

「ゆる……?」


スウェット姿の藍くんが、リビングの端にあるソファーに横たわっていた。


でも、その藍くんの様子が普通じゃない。

顔は赤いし、息が乱れている。

呂律もまわっていない。

わたしの名を呼ぶ声は、まるで平仮名をなぞるよう。