「そんなキミにちょっと急用で来てもらいたいところがあってね」

「急用で来てもらいたいところ?」


言われたままを繰り返しながら首を傾げると、密さんがいきなりわたしの腕を掴んだ。


「そ。オレん家」

「……え?」


まさかの返しに驚くも、時すでに遅し。

密さんはわたしの手首を掴んだまま走り出していた。


けれど状況を一切把握できていないわたしは、まさにパニック状態。


「あの、わたしこれから学校で授業がありますし、それに異性の方の家にお邪魔をするのは結婚を前提にお付き合いをしてからじゃないと……っ」


引っ張られながらも、なんとか事情を理解してもらおうと試みるものの、密さんは脇目も振らずに走り続ける。


「悪いけど、今日は由瑠ちゃん、学校サボりね」

「さ、サボり……!? もしそうする必要があるなら学校に電話しないと……」

「あはは~、それサボりって言わないから~」


びゅんっと風に乗って密さんの突っ込みが返ってくる。