国王様と婚約様に深く礼をし、舞台を降りようと、観客の方を向く。


舞台を降りたら、そこで崩れ落ち、涙を流す。

そこでエンディングの音楽が流れ、私達の劇は終わる。


皇輝から背を向けてしまったら、

幸せだったと思えていても、やっぱり失ったことはつらくて苦しくて、涙が流れ落ちる準備も出来ていた。


そして、劇が無事に終わる。

そんな昂ぶりが他の演者や近くで見守るクラスメイトから感じ取れるようになったとき、


――ぐいっ

勢いよく、腕を引かれ、私は壇上に引き戻され、抱きしめられた。


「…えっ?」

「おい…」


マイクが拾わないくらいの小声で、王様と婚約者役のふたりが戸惑いの声を漏らした。


私も、入り込んでいた物語の世界から引き戻されるように驚き、意図を探ろうと、観客からは見えないように皇輝の腰をそっと叩く。


皇輝は、気持ちが入り込んだようなそんな様子で、

ギュッと強く私を抱きしめ、耳元でそっと囁いた。