「天才かも」


そんな呟きが聞こえて、

私が台本から顔を上げると、彼女は満足そうな笑みを見せた。


「完成した。練習行くよ」

「え、え!?待って心の準備は?鏡は?」

「いいから!」


勢いよく手を引かれて、私は教室へと走っていく。


「キャスト陣!練習するよー!!」


そう大きく声を掛けた女の子に、引かれるように私は教室に入る。


「お、早くやろう!今なら4回・・・・」

「…え?」

「え?」


衣装を着た皇輝が入って来た時とは違う、戸惑いに溢れる教室の空気。

私は、絶えられず、入り口近くで驚いたように立つクラスメイトに縋る。


「鏡、鏡見せて…!」


小声でそう頼むと、その子は固まったまま、まじまじと私を見つめる。


「本当に?」

「な、なにが!早く鏡!」


少し声を大きくすると、彼女は、呆然としたままポケットから小さなミラーを取り出した。

そして、そこに移った女の子の姿に私は、皆と同じ様な顔をして固まった。


「…へ?」

「え?」


困惑に溢れた教室の中、なぜか監督と化した萌が、教室に戻ってきて声を大きくする。


「練習場所、借りられたから!移動するよー!ほら、ぼーっとしない!」

「い、いやだって…」


クラスメイトの言い訳の声に、萌は、納得した様子でなぜか自慢げに笑う。


「原石、発掘しちゃったよね」


そんな声に、クラスは、どっと盛り上がった。


「まじで、別人!」

「全然違う人に見えた。姫のイメージ通りなんだけど」

「これは、皇輝、見る目あったなあ」


そんな声が聞こえないくらい、私は驚いてずっとミラーを見つめていた。

そこには、絶対に自分だなんて信じられない、綺麗すぎるお姫様が映っていたから。