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メイクをするからと促され、萌と二人で衣装合わせの部屋へと移動する。


二人きりになって、私はやっぱり、と口を開いた。


「ねえ、萌ちゃん、やっぱり」


「もう!大丈夫だって言ってるでしょ。

それに、今日まで練習してきたこと私のせいで無駄にしたくないの。

お願い、都合いいことは分かってるけど、妃花にしか頼めない。」


さっきまでにこにことしていた萌ちゃんの真剣な言葉。

その瞳はわずかに潤んでいるようにも見えて、気丈に振舞っていた彼女は建前で、本当は悔しくて仕方ないのだと察する。

私は、その言葉とその本気さに、揺れ動く気持ちを押さえ、静かに言葉を紡いだ。


「でも…私には似合わないって。自分でも嫌なほど自覚してるし、前萌ちゃんもそう言ったじゃん…。

クラスの皆だって、絶対おかしいって思ってるよ、私がやるくらいなら自分がって思ってる子絶対いるよ…」


信じられないほど卑屈な言葉が出て、自分でも悲しくなる。

そうして俯く私に、萌ちゃんは何も言わず少し考える素振りを見せてから、私のメガネに手をかけた。


するすると耳から離れていくメガネに、少しの不安を覚える。

掛けていないと見えないほど視力は悪くないけど、なんとなく安心するからといつもかけていたメガネ。

学校で外すのはこれが初めてかもしれない。


「…ちょっと、何となく気付いてたけど。

素材良いなぁ…。肌綺麗すぎだし、メイクノリもいいし、超映える。」


萌は、メガネを外した私をまじまじと見つめ、メイク道具に手を掛けた。


「おだてたって、今更自信にはならないよ…」


文句を垂れる私に、萌ちゃんは困った顔をしながら、化粧下地らしき可愛らしい瓶のキャップを外す。

顔に向かって伸びてきた綺麗な指先に、思わずぎゅっと目を閉じると、その指先はスっと優しく頬に触れた。

丁寧に優しく触れる手の感触に、目を閉じたままじっと耐えることしばらく。

萌ちゃんはやっと、口を開いた。