「凄すぎない?」

「凄い、小説のイメージ通りだよ」


友人の声に応えながらも、私は皇輝から目を離せなかった。

白くキラキラした衣装を着た皇輝は、本当に物語の王子様そのものだった。


あんな衣装、顔で勝負しているアイドル以外着こなせないはず、

そんな風に思っていた心は簡単に裏切られた。


目が合って、私は慌てて視線を逸らす。


―しまった、見過ぎた。


キャストどうこうの揉め事があってから、

私は再び心の扉を閉ざし、皇輝のことをほとんど避けていた。


「妃花」


優しく呼ばれた声に、私は聞こえないふりをする。

どうしたって注目される。

もっと自分の存在の大きさを自覚した方がいいんだ。


振り向かない私に、皇輝は、席までやってきて、私の机の前にしゃがみ込んだ。


するすると空気を読むようにその場から消えようとする友人と腕をぐっと掴み、逃さないように引き留める。


「明日、一緒に回れない?」


周りの目を気にする私を察してか、珍しく小声で聞いてくる彼。

その姿の破壊力は凄まじく、私は赤くなってしまいそうな顔を隠して、首を振った。


「小道具係で回るから」


約束もしてないのにそう言い放つと、

皇輝はちらりと横にいた友人の顔を見上げ、

困ったように眉を下げてから、またクラスの輪に帰って行った。


「何話してきたの?」

「いや、別に。それより帰る準備じゃん?」


衛兵役の友人に聞かれてもさらっと流して笑う彼とは対照的に

私は胸のドキドキを押さえることに必死だった。


こんなの一時の夢。

信じて辛くなるくらいなら、私は…。